日本の法律に合わない英文就業規則はかえってトラブルのもと??
~英文就業規則の作成ポイント1~
外資系企業の人材戦略として、人材の流動化という考え方があります。
優秀な人材を惹きつけ採用し(Attract)、その人材に長い期間にわたって会社に貢献してもらい(Retain)、また残念ながら会社の期待にそぐわない、あるいは組織のチームワークを乱す社員にスムーズに退職してもらう(Release)というものです。
企業は採用段階では、どの様な人材をどういう目的でその会社に必要かを判断し、最終的に誰を採用するかといった幅広い自由が認められています。
また、企業には経営活動上どの社員にどんな仕事をしてもらうかという人事配置を決定する権限が認められていますので、職種・勤務地の異動に関する自由も認められています。
しかしながら、社員が退職する段階、特に会社側が解雇を行う場合には「民法上の権利の濫用はこれを許さず」という原則から、解雇をしなければならない特別の理由がなければ、社員を辞めさせることはできません。
解雇を行う場合には、会社側に客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法第16条)。
外資系企業の日本法人の多くは本社のルールブック(Employee Handbook)や雇用契約書をそのまま用いるケースがあります。しかしながら、日本の法律に見合った就業規則や雇用契約書でなければ公文書として効力を発揮することはできないのです。
例として:
外資系企業によく見受けられる問題として、本社流の考え方(例えば米国におけるat will base employment:雇用者はいつ、いかなる理由であっても社員を解雇できるという雇用慣行)に沿って解雇を行ったが合理的に客観的な理由がないため解雇が無効となり、解雇が有効に成立するまでの数ヶ月間の給与(back pay)と和解金を社員に対して支払わざるを得ないケースがあります。
労働審判や裁判などで、このbackpayは6カ月分から1年、場合によっては2年分の給与の支払を命じられることもあります。このような紛争が発生した場合、企業は時間と費用をかけて紛争解決に当たらなければならないため損失は多大なものになります。
また、一度社員とこのようなトラブルが起こり、会社が多額の遡及払い給与や和解金を支払わなければならなかった場合には、そのあとで他の何か問題のある社員に辞めてもらわなければならないときに、悪しき前例を作ってしまうことになります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、労働法制の違いを踏まえて内容を精査した労働契約を締結し、労働契約と整合性を取った就業規則を作成することをお勧めいたします。
マーシャル・コンサルティングでは本社のルールブックに日本の法律を照らし合わせ、日本法人独自の規則作りのお手伝いをいたします。
もちろん英語表記、日本語表記、どちらもご用意できますのでご相談ください。
日本の法律に準拠した契約書や就業規則の見直し・作成致します。打ち合わせの段階から納品まですべて英文対応可能です。御社の実情をふまえたオリジナル書式を作成いたします。
次回は英文就業規則を作成する場合の具体的な作成方法と弊社のサポートについてお話します。