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能力・適性に欠ける社員の対処法

能力・適性に欠ける社員の対処法

訴訟になった場合に、能力・適性に欠けるということの立証は難しいものです。職場のだれもが、その社員には適性がないと実感するような状況であっても、業務の具体的な内容や、職場で必要とされる能力水準などについて、第三者である裁判官にはまったくわからないわけですから、これを理解してもらうことは本当に困難です。

そこで、適正な目標を設定したり、具体的な指示もして時間も十分与えて仕事をさせてみたりするなど、能力・適性の有無が目に見えるようにする工夫が必要です。ここに対応策を挙げてみました。

 

対応策1 認識を共有化する

まず、社員の能力不足を明確化し、その点について企業と能力不足社員の認識を共有します。そのため、能力不足社員に対応するには、企業が社員に求める労働能力を、明確にするため文書にして労働者に交付することが必要です。

対応として、退職勧奨や解雇に至るまでに、注意書を交付したり誓約書を提出させたりすることを複数回実施しなければ、立証するのに大変苦労します。

対応策2 改善努力を促す

次に、能力不足社員に対し、その不足する能力の改善努力を促すべきです。このためには、3ヵ月間や6ヵ月間など期間を区切った改善指導を実施し、その間は、1~2週間に1度チェックした結果を本人にフィードバックして自覚させる必要があります。ただし、この期間があまりに長いと指導する上司に負担がかかることもありますので、注意が必要です。

その社員に求める「正社員としての適格性」=「(会社が)期待する水準」を明確にし、それに達したか否かを目に見える形で上司と社員で共有します。これによって会社も当該社員もその水準に達したか否かを明確に認識できて、労働紛争のリスクが低くなります。双方でその認識が共有化できれば、合意退職によって解雇を回避することができ、労使双方にとって良い解決になります。

具体的な方法としては、試用期間6ヵ月のところ入社から3ヵ月ほど経っても本採用にふさわしいレベルまで行っていないとき、残りの期間(2~3ヵ月)で会社が期待する本採用にふさわしい水準に達するかを当該職務に合わせて明確に設定し、半月から数週間ごとに面接でチェックします。

能力不足社員が改善努力をしても許容範囲に達しなければ、能力不足社員に対し、場合によっては退職勧奨、解雇等により退職することも考えざるを得ないでしょう。

 

対応策3 退職勧奨や解雇までの決断がつかない場合

退職勧奨や解雇までの決断がつかなければ職務を簡易なものに変更し、待遇もそれに見合うものとすることも検討せざるを得ないでしょう。降格命令でそれが達成できればそれを行い、降格命令では達成できなければ、個別の同意を待って変更すべきです。