ハラスメント

「アウティング」は不法行為

◆アウティングとは

アウティングとは、本人の同意なしに、セクシュアリティにまつわる秘密(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、性同一性障害であること等)を他者が周囲に暴露する行為を指します。

例えば、当事者から好意を伝えられた人が第三者に「あのひと、同性愛者なんだよ」と話すのも、相談を受けた人が「○○さんって、実は元・男性(女性)なんだって」と漏らすのも、本人の同意がなければアウティングに当たります。

 

◆アウティングをしてしまうとどうなる?

アウティングをされた当事者は、深く苦しむことになります。職場で行われた場合、退職のみならず、うつ病などの精神疾患やハラスメント裁判、最悪の場合は命にかかわる可能性すらあり、企業としても「知らなかった」では済まされない問題です。

実際に、アウティングを巡る事件について裁判が行われており、高裁判決の際は、アウティングが「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為」という判断がなされています(一橋大学アウティング事件)。また、アウティング被害を巡って企業側が従業員に謝罪、解決金を支払って和解したという報道もありました。

さらに2023年7月の報道では、池袋労働基準監督署においてアウティングによって精神疾患を発症したとして、労災認定されるといった事案もありました。

 

◆対策は事業主の義務

厚生労働省によるパワーハラスメント防止のためのガイドラインでも、労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること、すなわちアウティングがパワハラに当たることが明記されています。

つまり、事業主にはその防止措置が義務付けられています。

具体的な防止措置としては、職場での方針の明確化・周知・啓発、相談体制の整備、問題が発生した際の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護のための体制整備などがあります。

多様性を尊重し、従業員が安心して働ける環境を構築することで、企業の発展につなげていきましょう。