日本の法律に合わない英文就業規則はかえってトラブルのもと??
外資系企業の日本法人では、本社のルールブック(Employee Handbook)をそのまま用いるケースがあります。その条文を読んでみると、中には日本の法律に反する条文も見受けられます。そのような条文を記載した就業規則は有効なものとなりません。、日本の法律に見合った就業規則でなければ公文書として効力を発揮することはできないのです。
例として:
1.年次有給休暇の付与日数や有効期間
国により、年次有給休暇の付与日数や有効期間の考え方が異なります。そのため、以下のように規程されていることがあります。
- 付与日数が法律で定めた日数以下である
- 2年間の有効期間が1年で記載されている
- 退職時に、年次有給休暇の付与日数を退職日に応じて按分する
このような場合、年次有給休暇に関する就業規則の規定が労基法の最低基準を満たさず、その部分について無効となる場合があります。
2.定年の考え方
定年制とは、会社があらかじめ定めた年齢に労働者が達したときに、労働契約を終了させる制度です。ただし、定年年齢は、高齢者雇用安定法により60歳未満とすることができません。
また、事業主には65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務付けられているため、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入及び③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければなりません。
しかし、国によっては、定年年齢を定めることが年齢による差別であるとして、定年を定めない、もしくは特別な規定を定めるルールブックもあります。
定年を定めていない場合、雇用契約を終了するには自己都合による退職、もしくは退職勧奨に社員が応じる、あるいは会社からの解雇を行う必要があり、後でトラブルになることがあります。
3.時間外労働の割増賃金の規定がない
そのため、時間外労働手当が支給されていないことがあります。
後で時間外労働手当が支給されていないことがわかり、会社が多額の遡及払い給与を支払わなければならなかった場合があります。
また、海外における時間外労働手当のExemption(適用除外者)の制度を踏襲し、給与額を年俸で決めている年俸制の会社の場合、一定の残業時間が年俸にすでに含まれており、年俸制をとるなら残業代の支払いは不要と考える外資系企業は少なくありません。
一定の残業時間を年俸に含めているのであれば、年俸から計算した給与月額を固定残業代と基本給や他の手当と明確に区分する等の必要な労務管理が求められます。
このような労務管理を行わず、入社時に口頭で「この年俸には残業が含まれている」と説明を行ったとしても、残業代は支払われていることにならず、不払残業として後日社員から請求を受けるリスクがあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、労働法制の違いを踏まえて内容を精査した労働契約を締結し、労働契約と整合性を取った就業規則を作成することをお勧めいたします。
マーシャル・コンサルティングでは本社のルールブックに日本の法律を照らし合わせ、日本法人独自の規則作りのお手伝いをいたします。
もちろん英語表記、日本語表記、どちらもご用意できますのでご相談ください。
日本の法律に準拠した契約書や就業規則の見直し・作成致します。打ち合わせの段階から納品まですべて英文対応可能です。御社の実情をふまえたオリジナル書式を作成いたします。
詳細をお知りになりたい方、就業規則を見直したい方は、こちらのお問合せからご連絡下さい。よろしくお願いいたします。