外国人を雇用する場合、出入国在留管理庁への在留資格申請に必要な書類として、労働契約書(または労働条件通知書)の写しを提出しなければなりません。職務内容、就業場所、就労期間、職務上の地位、給与額を明記し、それらの事項が申請する在留資格の審査基準(*)を満たさなければなりません。
(*)例:特定技能の1号または2号の在留資格に見合った業務に従事させること
労働契約書は外国人本人の手元にも渡っていなければなりません。そのため、入社の数か月前に作成して本人に交付しておく必要があります。
(1)採用後・退職時のトラブルを低減する雇用契約と就業規則の作成が不可欠です
日本では、相手が言葉に出さなくても、相手の声や表情などの非言語の情報から察して動く、いわゆる「あうんの呼吸」でコミュニケーションが成り立つ高コンテクスト文化の国と言われています。一方、低コンテクスト文化とされる海外諸国(特に欧米)では、何事も言葉できちんと説明する必要があります。
外国人社員を採用した後にトラブルになったときのことを想定し、トラブルが起こりそうな事こそ採用時に話し合い、労働契約に明示し、トラブル発生時に対処できるようにしておきましょう。
労働条件通知書・労働契約書は、トラブル防止のため母国語あるいは平易な日本語で示すことが望ましいとされています。
●労働条件通知書を使用する
外国人雇用サービスセンターでは、多言語(英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語)で記載された労働条件通知書の書式のダウンロードが可能です。
【参考サイト: 東京外国人雇用サービスセンター】https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-foreigner/shiryou_ichiran/roudou_jouken_tsuchisho.html
●自社の労働契約書を使用する
自社で使用している雇用契約書を英語に直すことも一つの方法です。その際は、トラブル防止に必要な事項を十分網羅しているか、事前に和文で点検し、必要に応じて修正しましょう。
和文の雇用契約書の準備ができたら、英文翻訳を行います。
●労働条件以外の遵守事項を明確にする
社員としてこういう行動をしてほしい、あるいはこういう行動をしないでほしい、など、仕事を進める上で、会社として守ってほしいルールがあると思います。このような内容は誓約書にまとめて、入社時に署名・捺印してもらいましょう。
(2)出口(退職時のトラブル低減を考慮して)を見て入り口(採用時)で現在の労働契約を決める
日本と異なり、個人の権利意識について教育を受けてきた外国人社員の場合、採用が決まって条件面を話し合う時に、さまざまな要求を出してくることもあり得ます。すべての要望に100%応えることが難しい場合もあると思います。そんなときこそ、外国人社員の求めている内容をしっかり聞いたうえで、会社としてできることとできないことを明確にし、お互いに約束したことはきちんと守るという姿勢が必要です。
法律にも定められていない、会社のルールにも記載されていない。それならなぜだめなのかと聞かれたときに、そこで従業員が守るべき統一のルールとして示すのが就業規則です。
例えば遅刻が多いなどの問題行動が見られた場合に指導・教育するうえでも、就業規則が根拠になります。日本語で書かれているためルールがわからなかった、またはルールがわかりづらいとなどの反論を受けないためにも、英語もしくは母国語など外国人社員が理解できる言語で翻訳文を日本語と併記しておくことで、就業規則をより適切に周知することができ、トラブルを未然に防げます。その観点からも、就業規則の翻訳文を日本語と同様に整えておきましょう(労働条件の明示(労働基準法第1 5条) ・就業規則の周知(労働基準法第106条 )。
また外国人社員が「そんな規則があるなんて聞いていない」との反論を防止するため、就業規則をコピーしたものを渡しておくことが重要です。入社時の誓約書にも「私は、就業規則その他の社内規程・規則及び会社の指示命令を守り、誠実に勤務いたします。」という事項をトラブル抑止のために記載しましょう。
以上のポイントは、外国人社員だけに該当することではなく、多様な雇用契約や多様な価値観を持つ社員で構成される職場において参考にしていただきたいポイントです。ぜひご活用ください。
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