就業規則

固定残業手当制度について

◆固定残業手当制度の導入目的

外資系企業を中心に、固定残業手当制度を導入されるお客様が多くいらっしゃいますので、固定残業手当制度の導入と目的について紹介します。

固定残業手当制度とは、毎月決まった金額を見込みの残業手当として、実際の残業の有無にかかわらず支給する制度のことです。定額残業代手当ともいわれ、人件費抑制や支払い事務の負担軽減を目的とした導入事例が広がっています。

しかし、不適切な運用から労使トラブルを招くケースも増えています。従業員の勤務時間が見込みの残業時間を超えた場合、事業者には超過分の割増手当を払う義務が生じるにもかかわらず、いくら働いても定額分しか支払わなかったり、見込み額をあいまいにして残業代をごまかしたりするなどの悪質な事例もあります。

そのため、適法として固定残業手当制度をきっちり運用していくためには、下記に記載した実効要件を満すことが必須条件です。

 

◆固定残業手当制度の実効の要件

1、固定残業代部分が、それ以外の賃金と明確に区分されていること

これは、労働契約書の給与において固定残業手当金額を表記すること、従業員が給与明細の中で固定残業手当金額がいくらになるか分るようにする必要があるということです。

2、固定残業代部分に何時間の残業代が含まれているかが、明確に定められていること

月30時間や35時間のように具体的な時間を就業規則や契約書等に明記する必要があります。

3、時間外労働時間(残業)が上記2で定めた時間を超えた場合は、別途割増賃金を支払うこと

固定残業代という名称から「導入すれば、それ以上の残業代を一切払わなくていい」制度だと、よく誤解されがちですが、そうではありません。企業として、固定額分を超えた残業時間に対しては、割増手当を追加で支給する必要があります。

4、1~3の事柄が就業規則や契約書等に明記されていること

就業規則や契約書等に明記することに加え、制度導入時には社員説明会を行い、従業員の方に十分理解して頂く必要があります。また、上司や人事担当の方は従業員の残業時間をしっかり管理し、固定残業時間を超えた残業の把握と給与への反映を行わなければなりません。

 

実効要件を満たしていない場合のリスク

外資系企業において、一定の残業代が年俸に含まれ、その年俸をベースとして給与月額を決めているケースがよく見受けられます。上記の4要件が満たされていない場合、会社としては社員の年俸に残業代が含まれていると考え、口頭で説明していても残業代の不払を社員から問われたり、労働基準監督署の調査において是正勧告事項として指摘を受ける場合があります。

時間が経てば経つほど、不払の額が増え問題が悪化していきます。残業代の取扱が未整備である場合は、早急に検討する必要があります。

 

以上、ポイントとなる点をご説明しましたが、固定残業代の導入方法や手順など詳細をお知りになりたい方、就業規則を見直したい方は、こちらのお問合せからご連絡下さい。よろしくお願いいたします。

 

LinkedInも併せてご参照ください。

Yumiko Kamioka | LinkedIn