ドイツは、世界最大の休暇先進国といわれています。
ドイツでは労働者の権利として年休のすべてを取得するのが社会通念になっていますが、一方、日本における年次有給休暇の取得状況(2023年)を見ると、年次有給休暇取得率は62.1%でした。2019年の取得率(52.4%)から10ポイント近く上昇していますが、ドイツとはかなりの開きがあるとされています。日本では有給休暇は2年間の時効があるため、その年に取得できなかった年休をそのまま翌年に繰り越しますが、2年を経過した未消化の年休は結果として権利を放棄すること になります。
このようなドイツと日本の法律の相違、特に有給休暇の消滅時期により、本社と外資系企業の日本支社でトラブルになる場合があります。
ドイツでは使用者が労働者の希望を配慮した上で取得時期を決定します (Article 7.1 of the Federal Vacation Law)。つまり休暇の取得時期は使用者に決定権があることになります。(ただし従業員代表がある場合には, 代表と同意の上で定めるとされています)。
日本では、使用者は, 労働者の請求する時季に与えなければならないと定められています(Article 39 of the Labor Standards Law)。そのため社員が有給休暇を取得したいときは上司に申し出て取得するという制度になっています。
また日本では有給休暇の請求権は2年間有効と定められています。もしこの規定に反して日本の就業規則に「年休は翌年3月末に消滅する」旨をドイツ本社規程に沿って定めたとしても、労働基準法115条に定める2年間の請求権が有効になります。その理由は、 労働基準法13条に「法律に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分について無効とする。この場合において、無効となった部分はこの法律で定める基準による。」と定められているからです。
以上の観点から日本の労働基準法に準拠した労働契約や就業規則を定めることが企業にとって必要不可欠となります。
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