出張の移動を所定外時間に行った場合、残業になるか?
出張のため電車や車等での移動を所定外時間に行った場合、残業時間と認められるのでしょうか?
残業代は、それぞれの会社で定められた所定労働時間を超えて労働を行った(労働時間)場合に発生します。
さらに、労働基準法では「1日8時間、週40時間」という法定労働時間が定められており、この時間を超える労働については、会社は労働者に対して割増賃金を支払う必要があります。
この場合に残業時間と認められるかどうかは、移動時間が原則として「使用者の指揮命令下にあったかどうか」という点がポイントとなってきます。
出張では訪問の場所が遠いほど、移動時間は長くなります。出発は早く、帰宅は遅くなり移動時間中は拘束されます。そのため「移動時間が労働時間とならないのは、おかしい」という考えがあると思います。
出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。
移動時間は、電車や車などの中で拘束されますが、到着までは車内で何をしていようとも問題なく、労働者にとって自由な時間といえます。
その意味で、「使用者の指揮命令下」にあったとは言えず、移動時間は、通勤時間や休憩時間などと同様の性質のものとみなされ、基本的には、労働時間に該当しないと解されています。
月曜朝からの会議にため、日曜日の移動など、休日に移動することもあります。金曜日の出張で遅くなると、泊まってから翌日の土曜日(休日)に帰ることもあります。これらの休日移動も同様です。
一方、移動中であっても、会社命令で仕事をしている場合等は労働時間になります。例えば同行している上司から出張の資料の作成を命じられたようなケースです。
この場合、使用者の指揮命令下にあったと見なされるからです。
出張手当
企業によっては出張者に対して出張手当を支給しているケースもあります。
出張手当とは労働者の慰労、労いや出張による費用の軽減等の福利厚生の視点での目的として、会社から支給する「手当」となります。そのため、実費精算ではなく、一律の金額を支給するのが一般的です。
また、移動時間は法的にみて労働時間ではないとしても、実質的には従業員の時間を拘束していることから、移動時間については、賃金を支払う必要はないものの、出張命令を受け、広い意味では労働に従事しているといえますので、例えば、長時間移動や休日移動した場合に、出張日当を支給することなどを検討してもよいと考えます。
ただし、日当の支給は法律上の義務ではないため、支給するかどうかは会社が判断します。
「出張規程」の重要性
移動時間の取扱いや出張手当の内容等は曖昧になりやすく、労働者の誤解を招くリスクがあり、出張後に労働者が会社に不満を訴えることもあります。
そのため、移動時間が労働時間とみなされる場合や出張手当を支給する場合の支給要件や支給額について「出張規程」を作成し、労働者にしっかり明示しておくことが重要です。
詳細をお知りになりたい方、出張規程を見直したい方は、こちらのお問合せからご連絡下さい。よろしくお願いいたします。